美容師が「はさみが切れなくなった」ときにやることとは?
2025.6.27 15:53
― 京都はさみ職人からのアドバイス ―
美容師さんの仕事は、「切る」ことから始まります。
その大事な相棒が「切れないかも…?」と感じたとき、現場ではどんな行動がとられているのでしょうか。
#どうせ研ぎに出せばいいって話でしょ。
#そうなのかもしれないけど
#そうじゃないかもしれない!
そして、実際には何をすべきなのでしょうか。
#深く考えてみようって話です。
京都の工房で日々ハサミと向き合っている職人(切る方じゃなくて作る方ね)として、現場のリアルと、プロとしての対処法をお伝えします。
よくある現場での対処法
● ティッシュを切ってみる
「ティッシュがスパッと切れないから、やっぱり切れない」と判断される方もいます。
髪と紙では質感も切断の抵抗もまったく異なります。
目安にはなりますが、正確な診断ではありません。
#正直、ティッシュと毛髪では全然違いますよね。
#毛髪を切る道具だから、毛髪でチェックしてみよう。
● アルミホイルを切ってみる
都市伝説のように広まっているこの方法。
「刃が研がれる」というより、細かいダメージを加えている場合が多く、職人からはあまりおすすめできません。
#シロウトレベルで紙が切れるようになったというのは分からんわけではない。
#でもプロが毛髪を切って、切れるようになったと感じる美容師はいない・・・
●ハサミが切れるようになるという特殊な液体に漬ける
実際に売っている液体
都市伝説を超えている方法。
「硬い金属が刃に接着して」切れるようになる。
#アホなっ。
#いや、もしかしたら、そういうNASAが開発したようなすごい液体かも。
#でも。っているか、気持ち悪くないですか?
● オイルをさしてみる
刃ではなく“動き”の改善には有効。
開閉がスムーズになれば、切れ味が戻ったように感じることもありますが、根本的な解決ではない場合も。
#オイルを注すのはGood
#気持ちとしては〇だけど・・・
● すぐに研ぎに出す
一見正解のように見えますが、実は「切れない=すぐ研ぐ」が必ずしも正解ではありません。
刃のズレやネジの緩みなど、研がずに済むケースもあります。
#もちろん専門家に依頼するのがいい
#でも、実際そうでない場合もあります。
本当にすべきこと
1. 「なぜ切れないか」を見極める
切れないと感じたとき、原因はひとつではありません。
・ネジのゆるみ
ネジがゆるいと切れません。
力が分散してしまうから。
#単純に対策はネジを締めればOK
#手が痛くならないくらい、きつめがGOOD
#ネジは自分で締めるといいです。
・セニングの噛み合わせズレ
これもネジを締めて直ることがあります。
そうでないこともあるから、これは専門家に見てもらうのが良いと思います。
#セニングの良し悪しで研ぐ技術がわかる
・髪質の変化(湿気・ダメージ毛など)
毛髪の性質によって、よく切れるときとそうでないときがあるのは事実です。
ドライよりウエットの方が切れるのは当然ですよね。
晴れの日より、雨の日の方が良く切れます。
#その訳は毛髪が水分を吸って膨潤し、柔らかくなるから
・カットスピードと角度の問題
カットスピードというのは、ハサミを閉じるスピードです。
スピードが遅いと切れないです。
#実際に超ゆっくりと閉じてみて。
#マジ切れないで、切れそうになるから。笑。
角度というのは毛に対するハサミの角度。毛に対してどこから見ても垂直になるようにハサミを入れると切れて、そうでないと切れないものです。
#基本ですね
・使い方
使い方が悪いと切れないですよぉぉぉーーー
#あまり大きな声で言うと反感を買うので、言いません。いや言えません!
#その使い方じゃあ、切れないの当たり前だ!と誰か教えてあげてください。
#例えば、静刃と動刃・・・静刃と動かすと毛が逃げやすいものです。
・自分の感覚の変化
まずは「本当に刃が丸くなっているのか?」を疑うことも大切です。
逆に研ぎに出したからって、絶対切れるようになっているか?疑うことも必要です。
#実際研ぎにだしても切れるようにならなかったという話も聞きます。
#もちろん好みや相性もあるけど・・・
2. 定期メンテナンスという考え方
切れなくなってから研ぐのではなく、「予防する研ぎ」を取り入れる。
車検と同じように、状態が悪くなる前に整備することで、長持ちし、トラブルも減ります。
#ホントに切れなくなったら、毛が受けるダメージが大きくなります
#そうなってからは、遅い・・・・
3. 信頼できる職人を見つけておく
安さや速さだけで研ぎ先を選ぶと、かえって寿命を縮めることも。
#たまたま来た研ぎ屋さんに出したら、小さくなって切れなくなったとか、よくある話です
#初回はエースではなくて、サブを出すという工夫も必要かと。
自分のカットスタイルや好みに合う職人との“相性”を見つけておくことが、道具を育てる第一歩です。
最後に:ハサミは「一緒に育てていく」道具
京都はさみ職人は、切れ味を「戻す」だけでなく、「育てる」研ぎを大切にしています。
そのため、むやみに研ぎをすすめることはしません。
「切れない」と感じたときほど、一度立ち止まって、ハサミとの関係を見直すチャンスです。
あなたの仕事を支えているその1丁が、今どんな声を出しているか。
ぜひ耳を傾けてみてください。
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